特殊相対性理論の発表(1905年)から約10年後の1915年11月にアインシュタインが発表した一般相対性理論の論文により下記の重力場方程式
(いわゆるアインシュタイン方程式)を掲載しています。
\begin{equation}
G_{ij} = \cfrac{8π\ G}{c ^4}T_{ij} \label{e1}
\end{equation}
この方程式は、任意の座標変換に対して成立する共変形式となってます。
「アインシュタインテンソル\(G_{ij}\)」は、(2)項〜(4)項で説明するリッチテンソル\(R_{ij}\)、計量テンソル\(g_{ij}\)およびスカラー曲率\(R\)を使用して
次式により定義されます。
\begin{equation}
G_{ij} \equiv R_{ij} - \cfrac{1}{2}g\ _{ij}R \label{e1-a}
\end{equation}
アインシュタインテンソルは
\begin{equation}
G_{ij} = G_{ji} \label{e1-b}
\end{equation}
が成立して対称性があるため、一般に10の自由度を有しています。
宇宙項の追加
アインシュタインは、1915年の一般相対理論の論文にて前記のアインシュタインテンソルについて記述後、
1917年に宇宙の膨張と収縮に関する要素を追加するために、アインシュタインテンソルに次式のように宇宙項\( \varLambda \delta_{ij} \)を追加しました。
\begin{equation}
G_{ij} \equiv R_{ij} - \cfrac{1}{2}g\ _{ij}R + \varLambda \delta_{ij} \label{e1-c}
\end{equation}
しかし、その後の検討により、宇宙項の有無にかかわらず、宇宙が膨張することが導かれたので、
宇宙項は無視されることが多くなり、アインシュタインは後悔したと言われています。
ただし、真空のエネルギー密度が存在することは、宇宙項が存在することと数学的には同等であるため(1)、宇宙論としては意味があると言われています。
リッチテンソル\(R_{ij}\)は次式で表され、4次元時空の曲がり具合を表したものとなります(第11章「曲率とアインシュタインテンソル」参照)。
\begin{equation}
R_{ij} = \cfrac{\partial}{\partial x^{j}}{\Gamma^{k}}_{ik} - \cfrac{\partial}{\partial x^{k}}{\Gamma^{k}}_{ij}
+ {\Gamma^{k}}_{lj}{\Gamma^{l}}_{ik} - {\Gamma^{k}}_{lk}{\Gamma^{l}}_{ij} \label{e1-1}
\end{equation}
リッチテンソルは
\begin{equation}
R_{ij} = R_{ji} \label{e2}
\end{equation}
が成立して対称性があるため、一般に10の自由度を有しています。
計量テンソル\(g_{ij}\)は時空の曲がり方を反映したパラメータです。
計量とは、曲がった時空に沿った距離を計測する概念であり、曲がった空間である第8章 リーマン空間では次式で定義されます。
\begin{equation}
ds^{2} \equiv g_{ij}(x)dx^{i}dx^{j} \label{e3}
\end{equation}
計量、計量テンソルの詳細は Ⅷ章2項(1)計量 をご参照ください。
スカラー曲率\(R\)は次式で定義され、リッチテンソル\(R_{ij}\)を縮約したスカラー量となります。
縮約についてはこちらをご参照ください。
\begin{equation}
R \equiv g^{ij}R_{ij} \equiv \sum_{i=0}^{3} \sum_{j=0}^{3}g^{ij}R_{ij} \label{e4}
\end{equation}
エネルギー運動量テンソル\(T_{ij}\)は時空の質点等のエネルギー運動量の状態等を表わすものです。
エネルギー運動量\(T_{ij}\)の代表的な例を以下に紹介します。
① 離散的な質量集合体
3次元空間で速度\(\bm{v}\)で運動する質点(質量\(m\)) の4元速度ベクトル\(\bm{u}(\tau)\)
の反変成分\(u^{i}(\tau)\)を
\begin{equation}
u^{i}(\tau) \equiv \cfrac{dx^{i}(\tau)}{d\tau} \label{e5}
\end{equation}
と定義すると、離散的な質点の集合体のエネルギー運動量テンソル\(T_{ij}\)は次式のように表されます。
\begin{equation}
T_{ij} =
\begin{pmatrix}
\varepsilon & cp^{1} & cp^{2} & cp^{3} \\
cp^{1} & \rho u^{1}u^{1} & \rho u^{1}u^{2} & \rho u^{1}u^{3} \\
cp^{2} & \rho u^{2}u^{1} & \rho u^{2}u^{2} & \rho u^{2}u^{3} \\
cp^{3} & \rho u^{3}u^{1} & \rho u^{3}u^{2} & \rho u^{3}u^{3}
\end{pmatrix} \label{e6}
\end{equation}
ここで、
\begin{align}
& \varepsilon \mathrm{:体積あたりのエネルギー密度} = \rho \gamma^{2}c^{2} \label{e7} \\
& \rho \mathrm{:静止質量密度} \equiv m/V \label{e8} \\
& V \mathrm{:体積} \notag \\
& p^{i} = \gamma \rho u^{i}\ \mathrm{(}i=1,2,3\mathrm{)} \label{e9} \\
\end{align}
② 高密度ガス状物質のエネルギー運動量テンソル
高密度ガス状物質などの流体的な質量集合体の場合には、その空間3方向の単位面積に作用する圧力を\(P\)とすると、
エネルギー運動量テンソル\(T_{ij}\)は次式のように表されます。
\begin{equation}
T_{ij} =
\begin{pmatrix}
\varepsilon & 0 & 0 & 0 \\
0 & P & 0 & 0 \\
0 & 0 & P & 0 \\
0 & 0 & 0 & P
\end{pmatrix} \label{e10}
\end{equation}
ここで、
\begin{equation}
\varepsilon \mathrm{:体積あたりのエネルギー密度} = \rho c^{2} \label{e11}
\end{equation}
以上より、\(T_{ij}=T_{ji}\)であるので、エネルギー運動量テンソルは一般に10の自由度を有しています。
添字1,2,3が空間に関連する量であり、直交座標系であれば\(x,y,z\)方向の運動量成分です。
また、直交座標系であれば \(i \neq j\) のとき \(T_{ij}=0\) となります。
アインシュタイン方程式\eqref{e1}は、一般相対性理論において、光や物体は、重力により歪んだ(曲がった)4次元時空( \((x^{0},x^{1},x^{2},x^{3}) = (ct, x, y, z)\) )
に従って運動することを数式として表しています。
\eqref{e1}の左辺は4次元時空における時空の曲がり状態を表しており、
\eqref{e1}右辺は4次元時空における物質・エネルギーの分布を表します。
そのため、4次元時空に物質・エネルギーの分布によりその4次元時空が曲がり、粒子・光がその曲がりに沿って運動することになるところ、
\eqref{e1}はその時空の曲がり(曲率)を求めるための方程式となります。
左辺・右辺各項の下添字”\(ij\)”は4次元時空の座標の成分を表しています。
この方程式は共変的であり、どんな座標変換をしても成立します。
曲がった空間を解析するためのツールが計量テンソル\(g_{ij}\)であり、
得られた計量テンソル\(g_{ij}\)に運動方程式(第4章「4.1 重力場中の粒子の運動方程式(1))
を使用して重力場における粒子の運動や光跡を決定します。
重力場方程式\eqref{e1}は自由度10のテンソル成分を決定するためのものであり、
一般的には、\eqref{e1}は10個の連立偏微分方程式となります。
ただし、連立方程式の数は、空間座標が直交座標の場合では4個となります。
また、空間が球対称である場合には球座標系で表すと計量が時間\(t\)の計量成分\(g_{t}\)及び距離\(r\)の計量成分\(g_{r}\)の2個のみとなり、
簡単となります。
【参考文献】
(1) 佐藤勝彦:「相対性理論 新装版」岩波書店(2021)